2-1 植物の仕組み
植物は、光合成により活動をしています。
太陽から降り注ぐ光を利用して大気中の二酸化炭素と土中の水を合成し、酸素と栄養(糖)を作り出し、それを基にして自分の体を形成していきます。
また、植物自身は、その酸素と栄養を使って呼吸しています。そして余った酸素は大気中に放出され、他の生物の活動の呼吸に使われる。
葉や根に蓄えられた栄養は、草食動物や昆虫に食べられ、それを肉食動物が食べるという、食物連鎖の根底となります。また、動物の死骸は昆虫や微生物が分解し、植物の養分になります。
また、その養分が河川に流れ込み、海にたどりつくと、海中の生物の活動源となります。山が荒れると海も荒れてしまいます。
植物の体は炭素(C)と水(H、O)で出来ていて、材料は水と大気中の二酸化炭素で、その原動力は太陽の光です。
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木は光合成により空気中の二酸化炭素を 体に取り入れて成長していきます。 木や材木は炭素の固まりなのです。 |
2-1 天然林
天然林は、その名の通り、天然力に存在してきた森です。
樹木が生茂り、光合成により作られる栄養は、周囲の豊かな生態系の基盤となります。
特に熱帯雨林では1haあたり1万本以上の樹木が生えていて、光合成により生産される酸素は大気中の酸素の3分の1を占めます。熱帯雨林が「地球の酸素ボンベ」と呼ばれる由縁です。
樹木の葉が地面に落ちて堆積し、ふかふかの腐葉土となります。
この肥沃な土壌にしっかり根をはることで、さらに健全な樹体を形成します。
山林に降り注いだ雨は、葉や枝に貯められ、それが地上に落ちると、腐葉土に蓄えられます。
健全な山林は、天然のダムであり、雨が直接河川に流れ込むのを防ぐと共に、しっかりと張った根が土砂の流出を防いでいます。
山林を乱開発すると、大雨の度に真っ赤な土砂が流出し、河川が氾濫しやすくなります。
また、腐葉土に蓄えられた水の一部は、地中に浸透し、長い年月を経て山の麓で湧き水となり、河川を形成します。健全な山林は水源としての役割も持っています。
天然林は、自然攪乱により天然更新した森林で、極相林(原生林または老齢林)までのあらゆる遷移段階(発達段階)のもの、または人為攪乱により成立したものでも、極相状態に達したものといえる。
すなわち、人手が入っていないか、長い間にわたって人手の入った痕跡のない森林が天然林である。
そのなかでも、特に極相段階に達した森林を原生林と呼んでいることが多い。
まちがいやすい言葉
長岡市の広葉樹林について天然生林(天然林とは呼ばず)が主となる。
天然生林とは、伐採などの人為攪乱によって天然更新した二次遷移の途中段階にある森林(二次林)のことである。
また、天然更新補助作業(人手を多少なりかけて林を仕立てる作業)を行った森林や、天然更新した森林のなかでも保育作業(下刈り・雪起し・除伐・間伐など)を行った森林も天然生林と呼んでいる。
自然林⇔天然生林(二次林)
対語である。
長岡市では、ほとんど存在しないと考えられます。
長岡・東山・山本山県立自然公園は一部天然林と思われますが、古くから炭焼などで人手が加えられてきていることから天然生林二次遷移の途中段階にある森林と考えられます。しかし、地元の森林を良く知る方々の話を聞いてみる必要があります。
天然生林の利用
天然生林は古くから、炭・シイタケ原木・家具・工芸品・住宅等に広く利用されてきました。炭・シイタケ原木への利用では30〜40年サイクルで伐採をしてきました。
建築用材として利用するには針葉樹林で200年〜300年かかり、広葉樹で300年〜400年くらいかかります。
天然の種子から倒木までスギ・桧で300〜400年くらいです。
秋田杉・屋久杉ではもっと長くなります。
2-3.人工林
天然の山林を開拓し、人間が利用しやすいように整備した山林です。
植林の際に1haあたり2000〜3000本の苗を植えます。
日本の代表的な杉林は、10〜30年の成長が最も大きく、植林したばかりの苗は、雑草や雑木に押されやすいので、他の草木を伐採してやる必要があります。(下草刈り)
また、杉が成長するに従い枝がぶつかり合い、お互いに成長を阻害するのを防ぐ為に、適度に間引いてやる必要もあります。(間伐、除伐)
また、葉を落とさない針葉樹は腐葉土を形成しづらいので、下層にて草を適度に育てるため、根元まで光を入れる必要があります。(間伐、除伐・枝打ち)
このような手入れをしながら、最終的には80年で1haあたり200本〜400本まで数を減らしていきます。
手を加えずに放置すると、陽の光が下まで届かなくなる程うっそうと繁り、何年経っても成長しない暗い林になり根元は固く乾燥し、水が浸透しにくくなるので、水源としての機能を果たせなくなります。また、一度大雨が降れば鉄砲水となり災害を招きます。
手入れ不足の人工林は天然林に比べると生物の多様性・水源涵養機能等も低いですが、保育ときちんと行い、下層の植生を充実させることによりかなり機能を高める事ができ、天然林と差の少ない林へ誘導できます。
人工林は植林と伐採を繰り返す事で、人類に有効な資源をクリーンに持続的に得ることができます。収穫までの期間の短縮も行っています。
長岡市で行っている人工林造成は、主にスギですが、その他針葉樹・広葉樹でも行っています。(マツ・桐・ケヤキ・ナラ類等)
2-4.きれいだった江戸時代の山林
戦国時代、築城や焼失した家屋を再建するために、大量の木が伐採され、山林が荒廃してしまった歴史があります。
山林の整備が急務となり、江戸時代になると、伐採に許可制を強いて、無断で木を伐採した者は死罪という、かなりきつい制度を設けたようです。
このため、木材は貴重な材料となり、大切に扱われるようになりました。
また、限りある木材を最後まで使う習慣も根付きました。
木材として利用した後は、家具、道具、最後は燃料として、完全に使い切っていました。
間伐材や枝打ちで切った枝を使う事はもちろん、折れた枝や杉の落ち葉も燃料に使っていたようで、この頃の山林はとてもきれいだったということです。
2-5.炭焼きの文化
農閑期になると、田畑を持っていない小作農で、炭を焼ける技術を持った者は、冬の間に山に入り、炭焼き職人として木炭を焼いていました。一昔前まで長岡でも東山と西山で炭を焼く煙が見られたようです。
木炭の材料としては、カバやミズナラ、コナラ等の雑木が適しており、炭作りをするための雑木林に炭窯を作り、毎年場所を移動しながら、計画的に雑木を伐採していたようです。そのため、雑木林もきれいだったようです。
こうした、炭焼き窯で作られた木炭は、町に出回り、燃料として使われていました。
科学の進歩した現在において、木炭を分析すると、色々な効能があることがわかりました。
などがあげられます。こうした効果を積極的に利用した住まい方や商品が普及しています。
また、昔の人は直感的、習慣的にこれらの効能を知っていて、伝承してきたようです。
炭焼きの、もう一つの効果として、木酢液の利用があげられます。現在は科学的な分析の結果、農薬や化学肥料の替わりに使えたり、水を浄化する作用があることがわかりましたが、昔は山林に垂れ流しとなっていて、結果、木の育成を促進したり、河川の水の浄化に役立っていたようです。